今回は、少し違う視点からお話しします。私(みどり)ではなく、 夫の体験談です。 長年、土木・橋梁の仕事に携わってきた夫が、母の介護問題をきっかけに 働き方を見直すことになった話を、本人から聞いた内容をもとにまとめました。 「仕事と介護の両立」は、妻だけでなく夫にとっても切実な問題だと 改めて気づかされた経験でした。
土木・橋梁の仕事と、忍び寄る介護の現実
夫はもともと、長年にわたり土木・橋梁分野の仕事に携わってきました。 現場管理、施工計画、技術提案など、責任の大きい業務を続けてきましたが、 その一方で、家庭の事情——とくに介護への対応を無視できない状況になっていきました。
介護は、毎日目に見えて大きな出来事が起こるわけではありません。 しかし、通院の付き添い、日常の見守り、急な対応への備え、精神的な負担など、 小さなことの積み重ねが確実に生活に影響してきます。 仕事だけを優先して動けた時期とは違い、 「どこで、どのように働くか」が、そのまま家族全体の安定につながる ようになっていったと、夫は話していました。
転職を考えたとき、介護は大きな軸だった
転職を考えた際にも、介護の問題は非常に大きな要素だったと言います。 単に「今の仕事が嫌だから辞めたい」という話ではなく、 勤務地を限定したい、無理のない働き方に見直したい、長く続けられる仕事を選びたい という思いの背景に、介護の事情がありました。 勤務地を大阪限定で希望したのも、介護との両立を考えてのことでした。
- 勤務地・残業・出張の条件を最初に明確にしておく
- 面接では「家庭の事情」で済ませてよい範囲を決めておく
- 介護休暇・短時間勤務制度がある会社かどうかを確認する
会社への伝え方——どこまで話すべきか
退職や転職の理由を整理する際にも、介護は大切な軸になったそうです。 ただ、伝え方にはかなり気を遣ったと話していました。 会社との話し合いや退職願いの文面では、感情的な事情や複雑な家庭内の背景を そのまま出すのではなく、 「家庭の事情により、自分ひとりで介護を担っている」 という形で、必要な範囲に整理して伝えたそうです。
これは、事実を曲げるためではありません。 介護の問題は非常に個人的で、説明し始めると細部まで話が広がってしまいがちです。 しかし、会社に伝えるべきなのは詳細な家庭事情そのものではなく、 今後の働き方に影響する現実的な制約です。 そう割り切ることで、少し整理しやすくなったと夫は言っていました。
介護を理由にすると、「引き止め」や「条件改善」の話が出ることがあります。 しかし、これは単なる給与や待遇の問題ではありませんでした。 健康面や生活の持続可能性、家族を支える責任を踏まえた判断だからこそ、 待遇面で引き止められても気持ちは大きく揺らぎませんでした。
キャリアの「再設計」という発想
夫はこれまでの経験や資格を活かしながらも、今後は 管理職そのものより技術的な立場や顧問的な関わり方のほうが 現実的ではないかと考えるようになったそうです。 特に管理職や全国転勤を前提とする働き方は、介護との両立が難しくなる場面があります。
介護は、キャリアを後ろ向きにする理由ではないと夫は言っています。 むしろ、自分にとって何が大事かを見直し、働き方を再設計するきっかけ になったと。これまで積み上げてきた経験を捨てるのではなく、 介護と両立できる形で活かし直す——その発想に切り替えることで、 少しずつ前向きに考えられるようになったそうです。
介護を抱えながら働くすべての人へ
夫の話を聞いて、私(みどり)も改めて気づかされました。 介護は、施設選びや手続きだけでなく、家族全員の働き方や生き方にまで 影響を与えるものなのだと。
「無理をして従来通り働き続けること」だけが正解ではない。 家庭の事情を抱えながらでも、自分に合った働き方を探し、 できる範囲で責任を果たしていく。 同じように悩んでいるご家族の、少しでも参考になれば幸いです。