私(みどり)にとって、介護を考えるうえで大きな転機となったのが、 義父が亡くなった後の義母の住み替えでした。 夫と一緒に「これからどこでどう暮らすか」を考えた経験は、 単なる引っ越しの話ではなく、老後と介護を真剣に見据えるきっかけになりました。
4階建ての義実家——思い出はあるが、現実的ではない
それまで義母が暮らしていたのは、4階建ての義実家です。 長年住み慣れた家で、義母にとっても思い出がたくさんある場所でした。 ただ、夫と話し合うなかで、「このままここで暮らし続けるのは難しいのではないか」 という思いが強くなっていきました。
4階建てとはいっても、家庭用エレベーターがあるわけではありません。 若いうちは何とかなる毎日の上り下りも、年齢を重ねるほど負担になります。 体力が落ちたり、足腰に不安が出てきたりすると、一気に暮らしにくくなる。 介護が必要になる場面を考えると、階段の多い家はそれだけで大きなハードル になります。
義母はその後、足腰が弱くなり道端で転倒、頸椎の手術を経て要介護5になりました。 あのとき住み替えを決めていなかったら、介護はさらに困難だったと思います。 「元気なうちに住まいを見直しておく」ことの大切さを、身をもって感じました。
義実家を売却し、マンションの2階へ
義父が亡くなったことをきっかけに、夫と二人で義実家をどうするかを話し合いました。 「広い家を一人で持て余すから」という理由だけではなく、 義母がこれから無理なく暮らせる環境に変えておく必要がある という思いが強くありました。
そこで義実家を売却し、近くのマンションへ義母に移り住んでもらうことにしました。 選んだのは2階の部屋、エレベーター付きです。
「2階・エレベーター付き」という条件がなぜ重要か
今振り返ると、この「2階」「エレベーター付き」という条件は、 何気ないようでいて、かなり重要でした。
- エレベーターが止まったときでも、2階なら階段で対応できる
- 避難のしやすさ(高層階より安心)
- ちょっとした外出の心理的ハードルが下がる
- 荷物の持ち運びや天候の悪い日の外出が楽になる
- 将来、介助・見守りが必要になっても対応しやすい
- 階段の負担が少ないこと(2階、エレベーター付き)
- 周辺環境が大きく変わらないこと(住み慣れた地域の近く)
- 日常の買い物・通院に困らないこと
- 土地勘があること(緊急時の安心感)
- 将来の介助・見守りに対応しやすいこと
住み慣れた地域から離れすぎないことも大切
マンションを探す際には、義実家からあまり離れすぎないことも意識しました。 住み慣れた地域から急に遠くへ移ると、義母の生活の導線が一気に変わってしまいます。 通い慣れた店、病院、駅、周辺の道路事情、近所の感覚—— そうしたものは、日々の暮らしの中では思っている以上に大きいものです。
特に介護や見守りを意識するようになると、 「土地勘があること」そのものが安心材料になります。 急いで病院に連れて行く場面、ヘルパーさんに場所を伝える場面、 そうした細かい場面で、義母が慣れた地域に住んでいることは確実に助かりました。
「広さ」よりも「暮らしやすさ」へ
大きな家には、大きな家の良さがあります。 部屋数に余裕があり、荷物も置けるし、思い入れもある。 けれども、住まいというのは、所有することが目的ではなく、 そこで無理なく暮らせることが大切です。
管理の手間、掃除の負担、階段移動、修繕の問題—— そうしたことを考えると、年齢を重ねてからは 「広さ」よりも「暮らしやすさ」の方が重みを増してきます。
実際、義母がマンションに移ってからは、生活のしやすさという面で助かることが多くありました。 上下移動の負担が減るだけでも、日常の気持ちはかなり違うと義母自身も言っていました。 介護というのは、特別な場面だけを指すのではなく、 こうした日々の小さな負担の積み重ねとも深く関わっている のだと感じます。
住み替えは「介護の準備」だった
当時は「義父が亡くなったから住み替えた」という出来事として考えていました。 けれども今振り返ると、それは単なる引っ越しではなく、 義母のこれからの生活と介護を見据えて、住まいのあり方を見直した出来事でした。
介護は、何かが起きてから急に始まるものではありません。 住まいをどうするか、生活の拠点をどう整えるか、日々の移動をどう楽にするか。 そうした準備の積み重ねもまた、介護の一部なのだと、今は感じています。